ギルドについて

まずもって「冒険者ギルド」という団体・会社は存在していません。いきなり身もふたもない話ですが、冒険者ギルドは乗鞍高原にある➡合同会社リトルピークスというアウトドアツアー会社の冒険教育事業部の1プロジェクトです。事業部のプロジェクトと言っても僕だけの1人事業部なので、ちょっと格好いい感じで言ってみたかっただけです。もう二度としません・・・。
リトルピークスでは春夏秋冬1年中、山や川や森や雪や、キャンプやボートや沢登りやスノーシューやクロスカントリーなど、小学生から大人までを対象としたアウトドアツアーのガイドを生業としています。なので僕も普段は大人を相手にツアーをやっているわけですが、もともとはガイドになりたかったわけではなくて、子ども達にいかにして冒険をさせるか、それに必要なスキルと経験の為にいわゆる自然学校とかではなくアウトドアガイドの門を叩きました。別に自然学校を悪く言うつもりは毛頭無いんですが、色々探してみたけど小学生の自分だったらやりたい!と思うようなものは中々ありませんでした・・・。であれば!「なかったら何でも自分で作る」が僕の信条ですので、10歳の僕が知ったらきっとテンションが上がるであろうプログラムを日々考えています。
ちなみにですがリトルピークスでも前に板アウトドア会社でも子ども関係を担当していて、「長野県学習協サマーキャンプin信州」や「日本旅行トムソーヤクラブ長良川冒険学校」「環境省ジュニアパークレンジャー」などの企画で年間300~400人程度、また松本市の小学校の野外体験授業などもやりますので、それを合わせるとかなりの人数の小学生を毎年川や雪に叩き込んだりしてます(笑)。とは言え大事なお子さんを預けるのであれば、やっている人間の考え方や安全性がもっとも大事な所。そもそも何故こんなことがやりたいのか?という辺りも書いていきたいと思います。

 

冒険教育について

【自然体験の考え方】
自然体験というからにはその中に環境保護・環境教育的な要素があるのは当然なんですが、僕は「地球の為にこうするべきだ」とか「ああしなくてはならない」ということをプログラム中にあまり言いたくありません。もちろん故意であったり必要以上に環境を壊すようなことはさせませんが、基本的に自然環境に対してどう考えるかは、成長してから自分で考えればいいと思うからです。ぶっちゃけて言えば子どもの頃の自然体験は「遊ぶ」だけでいいし「楽しい」ということだけでいい。僕自身がそうでしたが、授業で教わったから先生にそう言われたから「自然は大切」と言うのはちょっと???という感じで違和感がありました。そりゃそういう風に教えられたら子どもはそう答えるでしょうに。でもそれは頭でっかちというか頭ごなしじゃないですかね?大事なことは、「何故それが大事なのか自分で考える」ことなんですから。小学生の僕、我ながら引くほど反抗的ですな。
よく小学校の体験授業の最後に「じゃあガイドさんから一言」みたいなことがあるのですが、僕のセリフは大体決まってます(笑)。それは「みんな今日楽しかったかな?楽しいことは好きになって、好きな物は大切になるから、どんどんみんな自然で遊んでください。好きな物が大切じゃない人なんていないでしょ?」と、こんな感じです。環境問題を考えるのに自然を好きであってくれればもちろん嬉しいですが、たとえそうでなくても全く触れもしないでただ知識によって考えないほうがいいと思うんです。子どもの頃に色々自然体験をして、それが好きでも嫌いでも覚えていてもいなくても成長した時に自分のどこかにあって、それで考えた結果が「人類は地球を破壊するから宇宙に出るべきだ」でもいいんですよ。きっとそこに至るほど真剣に考えたんでしょうから。まあ今の教育がさすがに昔と同じとは思わないですけど、教える人というか教え方によっては「べき」はありがちなことですからね。

【ゲームとそとあそび】
外で遊ぶのはよくゲームと対比されます。いわゆるゲームは子どもに悪影響が!というヤツですね。このサイトの「冒険者とは?」の所でも散々あおっている僕が言うのもなんですが、別にゲームが悪いと全く思ってません(笑)。僕は1975年生まれですが、小学校に入るぐらいの時に初代ファミコンが出ました。なので僕より上の世代ですらいいかげんゲームで遊んできているので、今の小学生の親の世代はもちろんゲームが当たり前にある世代なわけです。僕も今でもパソコンでゲームしてます。ゴリゴリのアウトドアかつガチガチのインドアです。もはやドアは意味を成してません。
そもそもゲームであってもそとあそびであってもテレビや動画であってもそうですが、子どもは単に、自分の手の届く中で一番おもしろいと思うものをやりたいにすぎません。影響が良いとか悪いとかはどっちの方向を見ているかで決まるわけで、ゲームであれテレビであれ養われるものや育まれるものが違うのであって、メディアによって想うことや感じるものが違うだけです。ですがそとあそび、と言うよりはアウトドアでの体験は、やったら楽しいだろうなとは思っても子どもだけでは危険なこともあるし、道具や時間や場所、何より親がやらないことはなかなかやれないという、他の遊びに比べて幾多のハードルがあります。それからしたら何十人という大人が何年と言う時間と何億円もかけて作った面白いゲームが手近で安価に遊べるのであれば、そっちが選ばれるのは当然と言うべきでしょう。
それでも僕は仕事でアウトドアをしているのにも関わらず休みでもアウトドアに出かけるわけですが、何故かと問われると「面白いから」のひと言につきます。やったことの無い子ども達はまだそのことを知らないんです。そこで身近にあるゲームを飛び越えて関心を持ってもらうために、逆説的ではありますがロールプレイングゲームのような設定にしています。アウトドアの醍醐味の一つは「非日常感」。もし自分が冒険の世界の登場人物になったら・・・?

【ゲームっぽいシステムについて】
ロールプレイングゲームっぽい設定も、トレーディングカードゲームのようなコレクション性も、言ってしまえば子ども達を引き付けるためのギミックです。ですがそれだけではなくて、参加する側と引率する側の両方のリスクを下げる目的があります。会社では都会の子ども達を集めて夏休みや冬休みに3泊4日で自然体験をする企画もやっていますが、例えば「危機感知能力」みたいなものは1週間とか2週間とか自然の中にいてもなかなか感じられるものではないです。それよりはどちらかと言うと例え半日でも回数を重ねた方が経験になります。とにかく何回も来て欲しいので、レベル上げにハマる、カード集めにハマるように仕向けるわけですね(笑)。もちろんこれは二次的な物で、一番は野外体験自体が面白くて何度も来てもらいたいと思っています。僕らが特段野生の勘に優れていてどんな危機も直前でピキーン!と感知して回避できるわけではないですが、それでも登山や川下りの時に「なんかイヤな感じがするな~」と思って引き返したり、自然の中の異音に敏感になっているのは、外で遊んでいる回数が物を言っていると思います。
また受け入れるこちらとしても、何度も来てもらえればお子さんの考え方や興味の方向・行動のクセや得意な物苦手な物が分かってきて、より安全により楽しんで参加してもらえます。「冒険」には出かけますが、やっぱり「安全」が第一です。またこの企画では講義とまではいかないですが、体験前に割とキッチリ知識や技術や危険性を教えて練習⇒実践という感じでやっていきたいと思ってます。これはスキルカードが免許みたいなものだという設定上のこともありますが、日本人はあまり野放しで自由に遊ぶのが得意でなく、ある程度の材料や道具・方法を示しておいてその組み合わせで遊ぶ方が向いていると考えるからです。ベーゴマは回す技術が強さですが、ベイブレードは技術よりパーツの組み合わせを試行錯誤するのが強さでしたからね。オリジナリティあふれる外あそびを考えるのは、自然の危険性の理解とか一定の技術とかを得てからの方が今の世の中いいだろうな~と。人んちの畑の土手に勝手に洞窟を掘ろうとしていた野放し小学生の僕を思い出せば、あの時代は荒かったというかバカだったというか(笑)。

【”教育”と言ってますが】
もう言うまでもないとはと思いますが、僕自体はあまり大々的に自然体験は教育だ!!という派閥の人間ではありません(自然体験の教育的効果自体はまったく疑ってません)。さらにはむしろ言わない方がいいかもしれませんが、教育という単語は親御さんへのアピールです(笑)。しかし実際「教える」という文字自体が自然体験の足かせになっているのも確かです。自分で連れて行っても植物の名前も知らないし、自然の事を聞かれても答えられない・・・。でもそれって一番大事なことでしょうか?僕の好きなレイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」という本には、
”知ることは、感じることの半分も重要ではない”
という一節があります。山男の父親と登山をしていた小学生の僕は、山小屋から雲海を見て別世界みたい!とは思っても、島の様に頭を出す山の名前を知りたいとは全く思いませんでした。今でも鳥や魚や虫を見て「こいつらは普段どういうことを考えているのかな~」とは思っても、どういう名前なのかを知りたいという欲求はあんまりないです。それはむしろガイドとしてよろしくないのではないかという(笑)。子ども達も興味が出てくれば、どんどん本人が調べるようになりますし。
とはいえ家庭ではアウトドアに連れ出すハードルがあるのは依然として変わりません。安全管理!僕らができます。道具!僕らが持ってます。楽しさ!僕らが知ってます。何を隠そう本職ですから。”冒険教育”とは言ってはいますが、僕らが楽しいこと・好きなことを、子ども達にも楽しんで欲しいし好きになって欲しいんです。それで自然を大切にしてもらって、僕らが偏屈な年寄になってもきれいな自然の中で相変わらず遊んでいたいんです(笑)。

スタッフについて

冒険者ギルドというかリトルピークスに所属・契約しているスタッフは、ほとんどが日本山岳ガイド協会(JMGA)やラフティング協会(RAJ)などのガイド資格所持者、レスキュー3やウィルダネスファーストエイドなどのレスキュー講習・応急処置講習を受講したプロガイドで構成されています。全員が全員プロというわけではないですが、そうでないスタッフも長年子どもキャンプなどの企画に参加しています。またスタッフは個人的に人となりを知っている元々の知り合いばかりで、学生や臨時のアルバイトのようなバックボーンが分からない人はいません。それと念のため事前にハラスメントの研修会や確認書の提出もしてもらっています。
そして何よりみんな小さいころから自然の中で遊び倒している猛者ばかりです。➡スタッフ紹介のページでは顔写真の公開を望まない人もいるので、載っていないメンバーも数人います。遊んでいるフィールドも得意分野も違いますが、個性が強いのは共通してます(笑)。ウチのスタッフで地元勢は1名だけ、それも佐久の方の人間なので、乗鞍からするとむしろ岐阜より遠いです。でもみんなここの自然が好きで、自然で遊ぶのが好きで、それを他の人にも好きになってもらいたいと思って移住してきてます。アウトドアだけじゃなくて田んぼや畑をやったり、山菜やキノコを採って食べたり、ずっとそうやって生かされていきないな~と思ってる人間ばっかりです。そんな人間たちが伝える自然、興味ありませんか?